「中華そば」への挑戦

image_07
 私の運営してきた琴平荘という旅館は、冬期間の集客が少なく、何か対策が出来ないかと、いつも考えていました。
 昔から、中華そばが大好きで、食べ歩きをしていたこともあり、中華そば処を設けることにしました。
 幸い、他店で食べた際、何の素材が使われているかの予想が付き、ほぼ同じものが作れるだろうと言う自信がありました。例えばA店の麺は旨いがスープは自分好みではない、B店のスープは旨いが麺は好みではない、C店のチャーシューとD店のメンマは旨いなどと、納得するものが比較的簡単にできました。
 ところが、良いとこ取りしたパーツを1杯の丼に入れ、試食してみると、実は不味かったのです。
 中華そばは正にバランスが最重要であると、それから試行錯誤、悪戦苦闘の日々が続きました。
 個性を出す為に麺も自家製麺ということで、粉を何種類も変え、配合も水の量も何度も変化させ、熟成させる為に保管場所の温度も何度も微調整したりしました。
 スープも色々な素材を入れ過ぎて、カレーライスのスパイス作りの様に迷宮入り。引き算、足し算を何度もしました。 大きな寸胴で取ったスープと、小さな寸胴で取ったスープでは、出来上がりが大きく違う。アルミ製寸胴とステンレス製寸胴では火加減が違うし、出来上がりも違う。 動物系のスープに直接魚介系素材を入れた場合と、別々な鍋で煮だし、出来上がったものを後に混合させた場合でも、違うものになることにも気づきました。
 そして、納得した中華そばは完成したものの国道沿いでもない、靴を脱いで旅館の大広間にお客様を呼べるのだろうか、大きな不安はありました。旨い物を作り続けていれば、時間は掛かるがいつかはたくさんのお客さんが来てくれるだろうと信じて営業しました。
 最初は閑散期の対策どころか、お客様がほとんど来館せずに赤字に拍車を掛けました。見込み客数で仕込んだ麺やスープも完売出来ず、泣く泣く廃棄する苦しい日々が続きました。
 でも、今では多くのお客様に盛り立てていただき、夢を見ているのかと、思うこともあります。
 いつも仕込も含めて私自身が作り手であり、同じものを作ろうとしているのですが、毎日微妙な変化があります。
 ブレを最小限に抑えるのが技術であり、現状の味に満足せず、更なる向上心を秘めて精進していく所存であります。